SEKKI 24 (12)

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僅かに残したレンガの庭に、アカンサスモリスの花が咲いた。今は手間のかからない観葉系植物が
ほとんどで、花が咲いても派手な色ではなく、眺めていて飽きない落ち着きのある色が多い。



●夏の真昼間の夢

♪__「♪カッチカチ、カッチカチ、カッチカチ、カチカチカチカチカチカチ♪…」
     「♪タッタ、タッタ、タタタタ、タッタ、タッタ、タタタタ…♪」______♪

高音と低音のパリージョが交互に鳴る。爪先と踵で交互に床を蹴る音が響く。
踊っているのは、鼻の高いジプシーの踊り子。

「オーレ!」パンパン!「オーレ!」パンパン!
どこからか大きな掛け声と手拍子が聞こえてくる____??


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斑入り銅葉のカンナの間に、こぼれ種で咲いた千鳥草の可憐な花を見ていると、
グラダナのアルバイシン丘の白い館で見た、情熱の中に哀愁が漂うあの舞踏を思い出す。

「オーイ!パン!パン!パン!もうお昼だよぉ~~」

カミさんの大声で、うたた寝を楽しんでいた老人は我に返った。菜園の馬鈴薯の収穫をしていた
老人は、木陰の籐椅子に疲れた身体を横に、まどろみの中でジプシーの夢を見ていたのに…。


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過って、色とりどりの花が咲いていた庭も、今はどこか哀愁が漂う。
アカンサスは、その昔アルハンブラ宮殿の庭で一目惚れした植物。







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SEKKI 24 (11)

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この時季に穀物の種蒔きをする、田植えの時期でもある。岡山の在では、北の山間部から
始まり、次第に南の平野部へと移って行く。

     
田一枚 植えて立ち去る 柳かな  (芭蕉)

これは早乙女たちが手で植えていた昔の話。今では一気に農機が済ませてしまう。


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木立の中に祀ってある神代の祠。五穀豊穣を祈願していたものか。



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「田鏡」はこの時期の風物詩。


♪山のカケスも泣いていた~

船村徹のヒット曲が思わず、鼻歌になって出る。神代の木立、田鏡に映った青い空と白い雲、
昭和の郷愁を呼ぶ風景はここにもあった。




(2017/6/5撮影、岡山市北区日近)





昭和の残像(18)

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小説<細雪>によると昭和初期、蒔岡の姉妹たちは、芦屋から神戸の街へ、驚くほど頻繁に出かけ
ている。港町神戸の何が彼女らを惹きつけたのか??往時の場所を探ってみるのも面白い。
(写真は、オリエンタルホテルがある旧外人居留地の一角で)


●珈琲文化発祥の地

芦屋巡り旅三日目の朝、ホテルから近い目当てのカフェに席をとって朝刊を広げた。
既にこの店のご常連が各席で新聞を読みながら、互いに目で挨拶を交わしている。
こういう雰囲気が好きで、名店が近くにある時ホテルの朝食は大概キャンセルする。

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珈琲の美味い名店は、インテリアやウエイトレスの身形作法も極上で、さすがに
カフェ文化発祥の街と云わせるだけのことはある。(スケッチはにしむら珈琲店)

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にしむら珈琲のモーニング。灘の名水「宮水」を専用の井戸から汲み上げて珈琲を淹れる。
「宮水」は微妙に海水が混じる硬水で、一度賞味したら虜になります。


●元町通り

蒔岡家の珈琲タイムは日常だった。或る時は季節の移ろう庭を眺めながら、或る時は居間で
古典音楽を聴きながら、珈琲と共に優雅な時間を過ごしていた様が小説に描かれている。

おそらく、神戸の街へ舶来雑貨の買い物や、美容院に行ったついでに、元町辺りの専門店で
焙煎された珈琲豆を入手し、それを自宅で挽いて淹れたであろうと思われる。


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小説に登場する神戸元町通り。街燈が点る頃になると古き良き時代の情緒が辺りに漂う。


●妙子の奢り

或るとき妙子は、神戸大丸デパートの前を南北に通る鯉川筋の画廊で、制作した人形展を開く。顔の利く
幸子の応援を得て一日目で大半の作品が売約済になった。夕方会場の片付けを手伝いに来た雪子や
娘の悦子の前で幸子は、

「今夜はこいさんに奢って貰お。こいさんお金持ちやよってに」 と云うと、
「そんなら、南京町の東雅楼にしてんか、あそこが一番安いよってに」 と妙子が返す。

「ケチやなあ、こいさんは。オリエンタルのグリル奮発しんかいな」 と幸子。
こういう会話からも姉妹でありながら、気質の違いが出て面白いシーンである。


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オリエンタルホテルは、雪子がお見合いの場所として利用する他、ここのグリルが度々登場する。
蒔岡の分家はこの洋食が余程お好きだったようだ。(写真は現在のオリエンタルホテル)

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オリエンタルホテルならずとも、元町界隈には洗練されたグリル料理の人気店があります。
その一品を食すると、洋食でありながら胃に優しい、神戸ならではの昭和の味がする。

●南京町

__東雅楼というのは南京町にある、表の店で牛豚肉の切売りもしている広東料理の一膳めし屋
なのであったが、四人が奥へはいって行くと、
「今晩は」
と、登録器の所に立って勘定を払っていた若い西洋人の女が云った。
(中略)
__悦子の好きな蝦の巻揚げ、鳩の卵のスープ、幸子の好きな鶩(あひる)の皮を焼いたのを
味噌や葱と一緒に餅の皮に包んで食べる料理、等々を盛った錫の食器を囲みながら、ひとしきり
キリレンコ一家の噂がはずんだ。(上巻第16章)


妙子は「一番安いよってに」と云ったが、囲んだ食器に盛られた料理の豪華なことに驚きます。
北京ダックなど、今の感覚では、グリルの洋食よりよっぽど高級な料理に思える。

キリレンコ一家というのは、夙川に住む亡命ロシア人の三人家族で、娘のカタリナは
日本人形制作に興味を持つ妙子の弟子。そういう関係で一家は蒔岡の分家と交流が
あった。


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東雅楼という屋号の料理店は今の南京町には無いようだが、当時実在していたかどうかは
分からない。

●ユーハイム

バウムクーヘンでお馴染の<ユーハイム>は、鯉川筋にある元町通り入口を入ってすぐの
処にある。創業者のカール・ユーハイム氏はドイツ人で、当初は横浜で洋菓子を作っていたが、
関東大震災を機に神戸に移住、元町で開業する、この店が小説に登場します。

__妙子はその日、神戸の元町へ買い物に出た帰りにユーハイムでお茶を飲んでいると、
「お婆ちゃん」がカタリナを連れてはいって来た。そして、これから新開地の聚楽館の屋上にある
スケート場へ行くのだと云って、あなたもお暇ならぜひいらっしゃいとしきりに誘った。
(上巻第16章)


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ユーハイムの正面。地階は神戸牛の肉料理が賞味できるレストラン、二階が
パーラーになっている。

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二階のパーラーでオーダーしたアラモード。チェリーのソースが付いて、見た目も味も
洗練された一品。昭和初期から変わらぬメーニューと思える。

ところで、この店の創業者がドイツ人ということで、小説<細雪>の面白さの一つに、
登場人物が国際色豊かなことにもあることが頭に浮かびます。

そういえば蒔岡の隣家は、シュトルツというドイツ人一家が住んでいて、ペータアと
ローゼマリーという幼い兄妹がいた。この妹が悦子と仲良しで、家族ぐるみのその
親しい交流場面や、やがて開戦で帰国する一家を埠頭に見送る情景が印象に残る。


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ユーハイムの階段の壁には多くの古い人物写真が
掛かっていて、その中の一枚に目がとまり、店の
了解を得て撮らせてもらった。


●与平

この小説には、瓢亭、吉兆、播半といった関西一流料亭の屋号や御馳走のメニューが登場して、
ついつい涎が出そうになります。

神戸生田神社辺りに「与平」という江戸前寿司店があって、蒔岡家はこの店を贔屓にしています。
そのモデルになった実在の寿司屋を探してみたが見つからなかった。

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阪急三宮駅の山手にある生田神社。

__あれはたしか七月の中旬のことであった、或る日幸子は桑山夫人を案内して神戸の与平へ
昼御飯を食べに行った時、今しがた妙子から電話があって、晩の六時に二人分の席を予約した
ということを聞いた。(中略)

小説を読んで驚くのは、握りの寿司ネタが豊富なことは今以上であり、想像していた昭和初期
のイメージ(一汁一采にコロッケなどで済ませた庶民の食事)とは雲泥の差があります。

●歓楽街「新開地」

蒔岡の姉妹は歌舞伎や西洋映画が好きだった。当時神戸随一の繁華街は「新開地」で、映画館や
劇場が軒を連ねていたから、姉妹は気を紛らわすため、この辺りを二日おき位に映画を見て歩いた、
とある。

その日、与平を出ると桑山夫人に別れを告げて、前に一度見たことのある「望郷」という仏蘭西
映画が新開地にかかっているのを見にいたのであったが__


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昭和14年に封切られたフランス映画<望郷>のポスター。
それにしても、「映画がかかる」という言い方は懐かしい。

__それからまた一箇月過ぎて、八月の中旬に、菊五郎が神戸へ来たので、貞之助、幸子、
悦子、お春の四人で松竹劇場へ出かけたことがあった。(下巻第9章)


ところで、歓楽街「新開地」は、映画全盛期の昭和30年代を境に、衰退の一途を辿ります。
小説<細雪>の姉妹の三女雪子は、京都への輿入れが何とか決まりますが、末妹妙子の
波乱な人生は、この神戸の街でその後も続きます。









昭和の残像(17)

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阪急芦屋川駅近く、小説<細雪>を記念した石碑がある。その経緯を知ってか知らずか
子供らが無邪気に戯れている。


●奥畑の啓坊

この小説の中心人物は同じ血を分けた四姉妹なのだが、面白いのは、三女雪子の見合い相手
となる4人の男たち、そして四女妙子に近づいてくる3人の男たちで、とりわけ面白いのはその男
たちへの姉妹の思惑や、鋭い観察眼を詳細に描写した場面なのです。

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阪急芦屋川駅付近。小説にも登場する、阪神間の子女が通う有名女子高が
山手にあって、セーラー服が目立つのも芦屋を象徴する光景である。

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蒔岡の分家夫人幸子は、健康面に神経質で信頼する櫛田医師の往診をよく頼んだ。
そのモデルになった実在の瀟洒な洋館風の開業医宅が阪急芦屋川駅北側にある。
 

例えば、妙子に迫る「奥畑の啓ぼん」と「板倉」の関係。片や船場の旧家「奥畑」の次男坊と、
その「奥畑」で丁稚をしていたことのある「板倉」を、ライバル関係に仕立て上げているのも
面白い。

女はもう、家柄とか、親譲りの財産とか、肩書だけの教養とかいうものには少しも誘惑されなく
なった、そういうものがいかに無価値であるかということが、奥畑を見てよく分かったから、自分は
それよりも実利主義で行く、自分の夫となるべき人は、強健なる肉体の持主であることと、腕に
職を持っていることと、自分を心から愛してくれ、自分のためには生命を捧げる熱情を有している
こと、この三つの条件にさえ叶う人なら、ほかのことは問わない、と云うのであった。(中巻第25章)

と、妙子は胸の内を姉の幸子に打ち明けます。あの突然の大水害の日、妙子の危機を知りながら
折り目の付いたズボンが泥水に汚れるのを嫌って、逃げ腰だった啓坊に対して、あの板倉の行為。
二人は好個の対照をなす人物として描かれています。


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これが蒔岡家の台所。この隣が3畳の女中部屋で、家事一切は概ね住込み
女中「お春どん」の仕事であった。有用な家政婦に恵まれた時代だったから、
芦屋の中流上層階級のご夫人方も有閑マダムになれた。


ところが妙子の意中の男「板倉」は、それから間もなく奇病に罹り片足切断の手術も甲斐なく、
亡くなります。


●マンボウと一本松

芦屋巡り旅の二日目、神戸三宮から阪神電車に乗って阪神西宮駅に降り立ちました。
予約していた駅前のレンタサイクルで、免許証を見せると、「お客さん、どちらへ行かはりますか?」

と尋ねるので、実はこういう目的で来たから、これから夙川より芦屋方面に行きたい、と云うと、
「マンボウでしたらすぐそこでっせ」と教えてくれた。さすが土地の人はこの話を知っているなと
大いに感心したものだ。

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これが小説に登場するマンボウ。省線(現JR)の下が通れる小さなトンネルで、
関西の一部の人にしか通用しない古い方言だそう。奥畑の啓坊がこのトンネル
から出て来てバスに乗るのを、女中の「お春」が目撃する。

妙子は旧家の血を継ぐ律儀な女で、板倉の死後三十五日までは、七日七日にひとりでこっそり
故人の郷里岡山へ行き、しめやかにお墓詣りをしていたが、四十九日の日、岡山の駅で妙子を
待ち伏せていた奥畑の啓坊に掴まり、そこから途絶えていた二人の交際が再び復活する。

奥畑との交際復活は、妙子なりの打算があってのことですが、この話は彼女の強かな一面を
のぞかせていて、他の姉たちとは違った、この時代の女性の生き方としてはかなり進んでいる。


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マンボウトンネルを北側に貫けた住宅街の一角に今も残る「一本松」。
この辺りに「啓坊」は住んでいると聞いて、お春はそっと行ってみると、
「奥畑」の門札が掛かった家の二階から妙子の声が聞こえる。


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或る日、妙子は一本松の啓坊の家で悪性の赤痢を患い、身動きが出来なくなる。
世間体を気にした蒔岡の分家は、妙子を病院に移して啓坊から隔離させるのだが、
啓坊はすぐに特別室の日本間を嗅ぎつけてやって来る。


●夙川

夙川は六甲山麓東南に水源がある川で、上流は扇状地のような地形から、阪神間の別荘地として
開けた処です。両岸にこんもりと繁る松林が美しく、奥畑の啓坊が住む一本松の家から近く、妙子と
デートの待ち合せ場所として小説にも登場します。


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これが夙川の景観。上流の阪急苦楽園駅から、下流の阪神香櫨園駅の間2キロは整備された
遊歩道となっていて、格好のハイキングコースであるが、この日は休日のためか、街中の商店街を
歩いているような人混みで、とてもハイキング気分にはなれなかった。この人混みだけは昭和初期
とは隔世の感がありますね。



さて、次回は芦屋巡り旅の三日目。(^^♪





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晴天続きの合間に適度な雨が降り、菜園の夏野菜がよく育っています。
この時節、麦穂もよく熟して麦秋は近い。麦酒の泡が恋しくなる頃だよな。(^^♪



●新緑の「利玄みち」を歩く。

5月15日の葵祭り。五月晴れの新緑の京都は魅力ありますが、あの人混みを
搔き分けて歩くのは、考えただけで疲れますね。
そんなご同輩にお薦めのスポットが、岡山市郊外にある小京都「足守」です。

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秀吉の正室「ねね」の兄君、木下家定の陣屋跡に整備された、「利玄みち」を歩くと
グリーンシャワーが降りそそぐ。


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数寄屋造りの吟風閣縁側に座って、新緑の庭園を眺めるのもいい。


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「利玄みち」の畔に遺された、白樺派の歌人木下利玄の生家に立ち寄ってみる。


近水園や利玄みちを散策して、武家屋敷や町家の遺る処に戻って来ます。
古民家の茶屋に立ち寄って、茶菓と抹茶を頂き、しばしの時間を憩います。

いかがでしょうか?ご同輩。これでちょっぴり京都に行ったような気分になれます。



(2017/5/16 撮影)





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熟年の秋を迎えた筆者が
貧乏ながら気持ちは優雅に
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