SEKKI 24 (14)

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梅雨明けの報と共に、岡山平野はこれから猛暑日が連続する予報。 酷暑と付き合う難行苦行の
覚悟が要ります。心頭が滅却出来る悟りの修行僧を見習わねばあきまへんのお~(ノД`)・゜・。


●護国山曹源寺

上の水彩画は今月上旬にスケッチした曹源寺の山門で、周辺は杉や桧の太木が鬱蒼と繁る森林状の
境内です。この寺は岡山藩主池田家の菩提寺で、裏山に登ると池田藩が開墾した沖新田が一望できる。

子供の頃、夏休みになると蝉を獲りにやって来た懐かしい場所ですが、今がちょうどその時期で、
「ジー…」で始まり「ジジジジ…」と大声で鳴くアブラゼミをよく掴まえた思い出があります。

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山門をくぐって夏でも薄暗い木立の中の参道を歩くと本堂があります。

筆者の住む沖新田に生息する蝉はと云えば、「ジー…」で始まり「シャシャシャシャー…」と鳴く
クマゼミだけで、曹源寺の境内に来ればアブラゼミが生息していたのを不思議に思っていましたが、

今になって、空気の乾燥した田園地帯と、山際で湿気が高い場所との環境の違いが生態を左右
していることが分かりました。ところで曹源寺の境内に来ると、東北大震災の3年前の2009年6月、
山寺(立石寺)に参拝した折の蝉塚を思い出します。


●蝉論争

蝉塚は急傾斜の参道の中腹辺りにあって、やはり鬱蒼とした木立に覆われていましたが、
この場所であの有名な俳句が詠まれたことに、暫しの間感慨にふけりました。

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立石寺参道の一角に設置されていた松尾芭蕉とその弟子曽良の像。

この芭蕉の句については、以前にも記述しましたが面白い話があります。
今から丁度90年前の昭和初期、歌人斎藤茂吉はこの句に出てくる蝉は<アブラゼミ>だったと
岩波の文学誌に公表します。

ところが、7月上旬の東北地方では<アブラゼミ>はまだ鳴かないという理由で、文士の間で論争が
起こり、岩波書店はこの件について東京神田の小料理屋に一席を設けて文士たちに議論させますが
、アブラゼミか?ニイニイゼミか?意見は対立してこの時は決着がつかなかった。


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クマゼミは柑橘類の木を好むようだ。八朔の木の根元には
無数の抜け穴があり、枝には無数の抜け殻を残している。
後方は菜園の片隅に造ったシェッド(園芸収納小屋兼休憩所)
その横に大きなオリーブ(マンザニロ)樹があったが、再び枝葉
を伸ばし始めた。

それから5年が経って、当の斎藤茂吉は現地調査の結果を基に誤りを認め、芭蕉の句の
蝉は<ニイニイゼミ>だった。と結論付けたと言われます。

それにしても、大暑の厳しさを忘れさせてくれる、のどかな良き時代の話ではありますが、
今日も朝6時頃から「シャシャシャシャー…」と大声で鳴く、あのクマゼミの声を聞くと
「すまんが、もう少し閑かにたのんまっせ!」と云いたくなりまする。(ノД`)・゜・。








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SEKKI 24 (13)

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暑気が次第に強くなる梅雨明けの頃を「小暑」と言いますが、今年はいきなり強烈な暑気に見舞われ
庭の木立から蝉しぐれが降りそそぐ。黄昏時の空を仰げば岡山平野の梅雨明けも近い気がする。


●YouTubeが面白い。

「お年寄りのほとんどの人はYoutubeを知らないので損をしている。」というような投稿を見た。
お年寄りとは?何歳以上を指すのか?その辺りの定義はないが、確かに言い得ている。

知らないでも済む話のようでもあるが、「為になる動画が何時でも机上で無料で視聴できる」
と聞けば、この年寄り(筆者)なら早晩視聴をを可能にする努力はするだろうと思う。

幸いにも筆者は8年前より視聴しているので、今更それがどうこうと言う訳ではないが、確かに
昨今の動画の中には、お年寄りにとってもためになるものが充実しつつある。

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その一つが、いま筆者が熱中しているある室内球技の実技と理論に関する動画で、これがあなた、
高い月謝を払って数年間通って教わった街の「スポーツ教室」よりも遥かに濃い内容で、しかも
分かり易いから驚きです。

●昭和のムード音楽に癒される。

最近になってYouTubeの数多いジャンルの中に、昭和を代表する挿絵画家岩田専太郎の美人画を
見つけた。実に魅惑的なその絵に見惚れてクリックすると、郷愁を誘う昭和のリズムが…(^^♪🎶

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南の薔薇 憧れの
君こそ 花のクイーン
夢の間も 忘すられぬ
花よ 薔薇の花

美しの月の宵 ともに盃をあげ
君よ歌え 恋の歌を
なやまし この胸 燃え立つ恋
南の国 スペインの
君は優しの薔薇 ♪♪







SEKKI 24 (12)

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僅かに残したレンガの庭に、アカンサスモリスの花が咲いた。今は手間のかからない観葉系植物が
ほとんどで、花が咲いても派手な色ではなく、眺めていて飽きない落ち着きのある色が多い。



●夏の真昼間の夢

♪__「♪カッチカチ、カッチカチ、カッチカチ、カチカチカチカチカチカチ♪…」
     「♪タッタ、タッタ、タタタタ、タッタ、タッタ、タタタタ…♪」______♪

高音と低音のパリージョが交互に鳴る。爪先と踵で交互に床を蹴る音が響く。
踊っているのは、鼻の高いジプシーの踊り子。

「オーレ!」パンパン!「オーレ!」パンパン!
どこからか大きな掛け声と手拍子が聞こえてくる____??


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斑入り銅葉のカンナの間に、こぼれ種で咲いた千鳥草の可憐な花を見ていると、
グラダナのアルバイシン丘の白い館で見た、情熱の中に哀愁が漂うあの舞踏を思い出す。

「オーイ!パン!パン!パン!もうお昼だよぉ~~」

カミさんの大声で、うたた寝を楽しんでいた老人は我に返った。菜園の馬鈴薯の収穫をしていた
老人は、木陰の籐椅子に疲れた身体を横に、まどろみの中でジプシーの夢を見ていたのに…。


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過って、色とりどりの花が咲いていた庭も、今はどこか哀愁が漂う。
アカンサスは、その昔アルハンブラ宮殿の庭で一目惚れした植物。







SEKKI 24 (11)

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この時季に穀物の種蒔きをする、田植えの時期でもある。岡山の在では、北の山間部から
始まり、次第に南の平野部へと移って行く。

     
田一枚 植えて立ち去る 柳かな  (芭蕉)

これは早乙女たちが手で植えていた昔の話。今では一気に農機が済ませてしまう。


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木立の中に祀ってある神代の祠。五穀豊穣を祈願していたものか。



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「田鏡」はこの時期の風物詩。


♪山のカケスも泣いていた~

船村徹のヒット曲が思わず、鼻歌になって出る。神代の木立、田鏡に映った青い空と白い雲、
昭和の郷愁を呼ぶ風景はここにもあった。




(2017/6/5撮影、岡山市北区日近)





昭和の残像(18)

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小説<細雪>によると昭和初期、蒔岡の姉妹たちは、芦屋から神戸の街へ、驚くほど頻繁に出かけ
ている。港町神戸の何が彼女らを惹きつけたのか??往時の場所を探ってみるのも面白い。
(写真は、オリエンタルホテルがある旧外人居留地の一角で)


●珈琲文化発祥の地

芦屋巡り旅三日目の朝、ホテルから近い目当てのカフェに席をとって朝刊を広げた。
既にこの店のご常連が各席で新聞を読みながら、互いに目で挨拶を交わしている。
こういう雰囲気が好きで、名店が近くにある時ホテルの朝食は大概キャンセルする。

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珈琲の美味い名店は、インテリアやウエイトレスの身形作法も極上で、さすがに
カフェ文化発祥の街と云わせるだけのことはある。(スケッチはにしむら珈琲店)

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にしむら珈琲のモーニング。灘の名水「宮水」を専用の井戸から汲み上げて珈琲を淹れる。
「宮水」は微妙に海水が混じる硬水で、一度賞味したら虜になります。


●元町通り

蒔岡家の珈琲タイムは日常だった。或る時は季節の移ろう庭を眺めながら、或る時は居間で
古典音楽を聴きながら、珈琲と共に優雅な時間を過ごしていた様が小説に描かれている。

おそらく、神戸の街へ舶来雑貨の買い物や、美容院に行ったついでに、元町辺りの専門店で
焙煎された珈琲豆を入手し、それを自宅で挽いて淹れたであろうと思われる。


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小説に登場する神戸元町通り。街燈が点る頃になると古き良き時代の情緒が辺りに漂う。


●妙子の奢り

或るとき妙子は、神戸大丸デパートの前を南北に通る鯉川筋の画廊で、制作した人形展を開く。顔の利く
幸子の応援を得て一日目で大半の作品が売約済になった。夕方会場の片付けを手伝いに来た雪子や
娘の悦子の前で幸子は、

「今夜はこいさんに奢って貰お。こいさんお金持ちやよってに」 と云うと、
「そんなら、南京町の東雅楼にしてんか、あそこが一番安いよってに」 と妙子が返す。

「ケチやなあ、こいさんは。オリエンタルのグリル奮発しんかいな」 と幸子。
こういう会話からも姉妹でありながら、気質の違いが出て面白いシーンである。


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オリエンタルホテルは、雪子がお見合いの場所として利用する他、ここのグリルが度々登場する。
蒔岡の分家はこの洋食が余程お好きだったようだ。(写真は現在のオリエンタルホテル)

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オリエンタルホテルならずとも、元町界隈には洗練されたグリル料理の人気店があります。
その一品を食すると、洋食でありながら胃に優しい、神戸ならではの昭和の味がする。

●南京町

__東雅楼というのは南京町にある、表の店で牛豚肉の切売りもしている広東料理の一膳めし屋
なのであったが、四人が奥へはいって行くと、
「今晩は」
と、登録器の所に立って勘定を払っていた若い西洋人の女が云った。
(中略)
__悦子の好きな蝦の巻揚げ、鳩の卵のスープ、幸子の好きな鶩(あひる)の皮を焼いたのを
味噌や葱と一緒に餅の皮に包んで食べる料理、等々を盛った錫の食器を囲みながら、ひとしきり
キリレンコ一家の噂がはずんだ。(上巻第16章)


妙子は「一番安いよってに」と云ったが、囲んだ食器に盛られた料理の豪華なことに驚きます。
北京ダックなど、今の感覚では、グリルの洋食よりよっぽど高級な料理に思える。

キリレンコ一家というのは、夙川に住む亡命ロシア人の三人家族で、娘のカタリナは
日本人形制作に興味を持つ妙子の弟子。そういう関係で一家は蒔岡の分家と交流が
あった。


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東雅楼という屋号の料理店は今の南京町には無いようだが、当時実在していたかどうかは
分からない。

●ユーハイム

バウムクーヘンでお馴染の<ユーハイム>は、鯉川筋にある元町通り入口を入ってすぐの
処にある。創業者のカール・ユーハイム氏はドイツ人で、当初は横浜で洋菓子を作っていたが、
関東大震災を機に神戸に移住、元町で開業する、この店が小説に登場します。

__妙子はその日、神戸の元町へ買い物に出た帰りにユーハイムでお茶を飲んでいると、
「お婆ちゃん」がカタリナを連れてはいって来た。そして、これから新開地の聚楽館の屋上にある
スケート場へ行くのだと云って、あなたもお暇ならぜひいらっしゃいとしきりに誘った。
(上巻第16章)


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ユーハイムの正面。地階は神戸牛の肉料理が賞味できるレストラン、二階が
パーラーになっている。

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二階のパーラーでオーダーしたアラモード。チェリーのソースが付いて、見た目も味も
洗練された一品。昭和初期から変わらぬメーニューと思える。

ところで、この店の創業者がドイツ人ということで、小説<細雪>の面白さの一つに、
登場人物が国際色豊かなことにもあることが頭に浮かびます。

そういえば蒔岡の隣家は、シュトルツというドイツ人一家が住んでいて、ペータアと
ローゼマリーという幼い兄妹がいた。この妹が悦子と仲良しで、家族ぐるみのその
親しい交流場面や、やがて開戦で帰国する一家を埠頭に見送る情景が印象に残る。


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ユーハイムの階段の壁には多くの古い人物写真が
掛かっていて、その中の一枚に目がとまり、店の
了解を得て撮らせてもらった。


●与平

この小説には、瓢亭、吉兆、播半といった関西一流料亭の屋号や御馳走のメニューが登場して、
ついつい涎が出そうになります。

神戸生田神社辺りに「与平」という江戸前寿司店があって、蒔岡家はこの店を贔屓にしています。
そのモデルになった実在の寿司屋を探してみたが見つからなかった。

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阪急三宮駅の山手にある生田神社。

__あれはたしか七月の中旬のことであった、或る日幸子は桑山夫人を案内して神戸の与平へ
昼御飯を食べに行った時、今しがた妙子から電話があって、晩の六時に二人分の席を予約した
ということを聞いた。(中略)

小説を読んで驚くのは、握りの寿司ネタが豊富なことは今以上であり、想像していた昭和初期
のイメージ(一汁一采にコロッケなどで済ませた庶民の食事)とは雲泥の差があります。

●歓楽街「新開地」

蒔岡の姉妹は歌舞伎や西洋映画が好きだった。当時神戸随一の繁華街は「新開地」で、映画館や
劇場が軒を連ねていたから、姉妹は気を紛らわすため、この辺りを二日おき位に映画を見て歩いた、
とある。

その日、与平を出ると桑山夫人に別れを告げて、前に一度見たことのある「望郷」という仏蘭西
映画が新開地にかかっているのを見にいたのであったが__


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昭和14年に封切られたフランス映画<望郷>のポスター。
それにしても、「映画がかかる」という言い方は懐かしい。

__それからまた一箇月過ぎて、八月の中旬に、菊五郎が神戸へ来たので、貞之助、幸子、
悦子、お春の四人で松竹劇場へ出かけたことがあった。(下巻第9章)


ところで、歓楽街「新開地」は、映画全盛期の昭和30年代を境に、衰退の一途を辿ります。
小説<細雪>の姉妹の三女雪子は、京都への輿入れが何とか決まりますが、末妹妙子の
波乱な人生は、この神戸の街でその後も続きます。









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Author:Mrトト
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熟年の秋を迎えた筆者が
貧乏ながら気持ちは優雅に
日々の夢想を書き下す日記。
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